イボ治療の液体窒素について

こんにちは。
札幌市厚別区新札幌の皮膚科・美容皮膚科「さとこ皮膚科・美容クリニック」です。
今回は、当院で受診の多いイボについて書きたいと思います。特に5-6月にかけては毎年治療ご希望の方が多いので、事前にぜひ知っておいていただきたいことをお伝えします。
当院でイボの治療を希望される方には、お待ちの間に読んでいただく紙をお渡ししています。
そこには、保険診療と自費診療(炭酸ガスレーザー)の特徴、メリットとデメリットが書いてあります。
その後診察で悪性のものがないかを確認のうえ、どちらをご希望か確認するのですが、液体窒素を希望される場合には注意事項を書いた紙をお渡ししてお帰りいただいています。
赤みやヒリヒリ感が続くことや、擦れると水膨れができやすいこと、色素沈着になる(シミのように色が残る)可能性などが書いてあります。
事前にこういったご説明をしてから治療に入るのですが、症状の出方には個人差があります。
言われていたけれど全く問題なかったという方もいますし、予想以上に反応が出てしまう場合もあります。
今回は残念ながら、激しく色素沈着が出た方がいらしたのでお知らせしたいと思います。
一番ひどい時の状態は非典型的なので、少し落ち着いた時の写真となります。
顔や首のいぼを、液体窒素で治療しました。
上記の通り事前にご説明してから治療に入ったわけですが、気になるイボを一気に治療したために色素沈着の数が多くなってしまいました。
(液体窒素に限らずなのですが、色素沈着は周囲へ滲んで広がるように色がつくので、できものの一回りから二回りくらい大きく出てくるのが特徴です。茶色の内部に濃い茶色が見えると思いますが、濃い茶色部分がもともとのイボです。)
色素沈着は数か月で落ち着いてくると教科書的には書いてありますが、1年近く残る方もいますし完全に消えないケースもあります。
内服薬や外用薬も使いながら対応しますが、回復までに時間がかかります。
「色素沈着がこんな感じだと事前に分かっていれば、液体窒素を受けなかった」と肩を落とす患者様の言葉を前に、イメージを上手に伝えられなかったことを申し訳なく思います。
今回、ご本人の同意を得まして、写真を共有させていただきます。
誤解のないように補足をさせていただくと、全員が全員同じような色素沈着を起こすわけではありません。
もともとの体質、いぼの場所、摩擦が多い場所かどうか、紫外線に当たるか、など複数の要素が関係しています。
上記の情報をもとに色素沈着が出やすいかどうかを予測していますが、それでも予期せぬ出方をする場合があります。
寝ている間に痒くてかいてしまったとか、ワイシャツの襟がきつくて擦れてしまったとか、不可抗力の部分もあります。
保険診療の液体窒素においてはこの問題が常について回りますので、大学病院や総合病院で勤務していた時から同様のケースは複数経験してきました。
(液体窒素をしないという方針の先生もいらっしゃるくらいです。)
当院は保険医療機関ですので、上記ご説明のうえ液体窒素をご希望の方には行っていますが、治療動機として美容的要素が強い場合は自費のレーザーでの照射をご案内しています。
自費であっても(液体窒素より程度は軽いですが)赤みや色素沈着は多少出ますので、紫外線の強い夏の治療はお勧めしないですし、自費診療のレーザーは術後に軟膏を塗って処置しますので汗をかく時期は不快感が増します。
すごく小さいものなら様子を見てもいいのではというお話もします。
ご本人としては「すぐに治療してほしかった」「取ってほしかったのに様子を見た方がいいと言われた」ということで、治療意欲をそがれるような気持ちになるかもしれませんが、治療後の傷跡や色素沈着も考えた時にベストな判断はどれなのか、が最も重要です。
良性疾患で急ぎでないもの、美容的配慮が必要なものであれば尚更です。
肌色の小さなイボの場合、治療した後の色素沈着のほうが目立ってしまうので、「イボのザラつきは取れたけれどシミっぽくなってかえって目立ってしまった」という結果になりかねません。
マスクを外し首元を出すようになるため、5月から6月にかけては顔や首のイボ治療のご希望が非常に多いです。
この夏に向けて治療したいというお気持ちは重々承知ですが、色素沈着が出てしまっては今夏が犠牲になってしまうので、上記のような考えをもとに診療していることをご理解いただければ幸いです。
診察を受けるのは今だとしても、秋以降に治療を組むことは全く問題ありません。これは保険診療・自費診療ともに共通していえることです。
ご本人が困った時が治療の始め時ではありますが、季節によって向き不向きがあるのも事実なので、長い目で見てご検討いただければと思います。
イボに関する記事はこちらもご覧くださいね。

札幌市の皮膚科専門医・美容皮膚科医です。2022年7月に札幌市厚別区新札幌にて「さとこ皮膚科・美容クリニック」を開院しました。
私自身が体質的な敏感肌に悩み、普段のスキンケアを見直すことで肌のトラブルを減らせると痛感しています。
忙しい外来では伝えきれないたくさんのことを、記事を通してお届けしたいと思っています。
スキンケアのよくある間違いについて医学的な視点でお伝えしているほか、敷居が高いと思われがちな美容皮膚科治療についても皮膚科専門医として発信していきます。
2006年札幌医科大学卒業
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医/美容皮膚科・レーザー指導専門医
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