貼り薬を上手に長く使い続けるためのコツ
スキンケア
塗り薬だけではなく、最近は貼り薬も増えてきました。
腰痛など患部に使うシップは定番ですが、それ以外にも喘息や狭心症、がんの痛みコントロール、アルツハイマー型認知症、更年期など様々な症状に使われるようになりました。
貼り薬が選ばれる理由はいろいろあります。
①薬剤が肝臓を通過せず直接血管に入るので確実な効果が期待でき、肝臓への負担も少ない
(普通の飲み薬は、腸で吸収されたのち最初に肝臓で代謝されます。)
②有効成分の血中濃度が急激に高くならず、ほぼ一定量の薬剤が継続的に投与される
→1日を通して穏やかに一定の効果を発揮します。
③視覚的にすぐわかる
→貼り薬に、マジックペンで貼った日付を書いている方を多く見かけますが、視覚的に、いつ投与したかがはっきりわかるというのは、薬の管理に役立ちます。
これは、高齢化が進む中、ご本人やご家族の心配を減らせる大きなメリットです。
飲み忘れ、飲みすぎなどの心配がないですからね。
(ただし、書く日付を間違う可能性を考えなければなりませんが)
④手軽に使用できる
→注射は病院に通わなければならず、痛いですし、飲み薬は種類によって飲みづらいものもあり、ご高齢の方にはやはり負担が大きいです。
スキンケアというと、どうしても美容のイメージが強いですが、実は貼り薬を上手に使うためにもとても大切なんです。
通常、角質層のバリアを突破するのは非常に難しいです。
しかし、薬剤は皮膚表面から真皮の血管に成分を届けなければならないので、バリアを突破するために、様々な技術を駆使しています。
飲み薬何錠分も薄い貼り薬1枚に収めなければなりませんし、一定量が貼り薬から皮膚に届けられるよう設計する必要があります。
便利さの裏には相当の技術が必要で、中には皮膚に負担をかける成分も混ぜなければなりません。
バリアをむりやり壊して突破するわけですから、普段の皮膚が乾燥していてバリア機能が十分でないと、当然副作用が出てしまうこともあります。
【貼ったところが赤くなったら…諦める前に、保湿してみて】
貼ったところが赤くなる場合、2種類考えられます。
1つは、貼り薬の何らかの成分によるアレルギー(かぶれ)ですね。
この場合、他の薬への変更が必要ですが、貼り薬の種類は飲み薬ほど多くなく、貼り薬をあきらめなければいけないケースもあります。
もう1つは、刺激によるものです。
これは、皮膚の乾燥などで成分が皮膚に刺激を起こし、赤くなるものです。
注意していただきたいのは、アレルギーは限られた人にしか発症しませんが、刺激性の赤みは、誰にでも起こりうるということです。
極端な例ですが、塩酸を皮膚にかけると誰の皮膚でもダメージを受けるのと同じです。
「他の科で出された貼り薬で赤くなってしまいました」
「貼る場所を毎回変えているんですけど、やっぱりかぶれですよね…?」
という患者様を、今までたくさん診てきましたが…
皮膚をきちんと保湿することで、その薬を使い続けられることも多々あります。
アレルギーだから、かぶれだから、もう使えない、とがっかりする前に…
体を洗いすぎない、擦らない、石けんは脇・デリケートゾーン・足先など部分的に、など皮膚に負担をかけないスキンケアで、肌のバリアを見直してみましょう。
狭心症の薬、喘息の薬など、貼ることで全身への作用を期待するタイプの貼り薬では、同じ場所に貼り続けないようにしましょう。
薬をはがす時に角質層も取れてしまうので、その部分の皮膚のバリアが弱くなってしまうんですね。
ベリっと強くはがさずに、少しずつ優しくはがしましょう。
貼る予定の場所は、保湿をしっかり行うことが大切です。
保湿に気を配り、毎回貼る場所を変えることで、刺激による皮膚炎を防げますよ。
これからも、貼り薬の活躍に期待したいですね。
札幌市の皮膚科専門医・美容皮膚科医です。2022年7月に札幌市厚別区新札幌にて「さとこ皮膚科・美容クリニック」を開院しました。
私自身が体質的な敏感肌に悩み、普段のスキンケアを見直すことで肌のトラブルを減らせると痛感しています。
忙しい外来では伝えきれないたくさんのことを、記事を通してお届けしたいと思っています。
スキンケアのよくある間違いについて医学的な視点でお伝えしているほか、敷居が高いと思われがちな美容皮膚科治療についても皮膚科専門医として発信していきます。
2006年札幌医科大学卒業
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医/美容皮膚科・レーザー指導専門医
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