低温やけど、火だこ…ストーブや湯たんぽによる皮膚病の症状と対処法
寒くなって、ストーブや湯たんぽが手放せなくなってきました。
この季節は「熱による皮膚病」が多くなってきます。
繰り返す温熱刺激で起こる「火だこ」
毎日のように長時間ストーブに当たっていると、「火だこ」という皮膚病になります。
熱に晒されていた部分の皮膚に、茶色の網目模様が付いちゃうんですね。
腰とか、すね・ふくらはぎに多いです。
温熱刺激がなくなると改善しますが、網目模様が消えるのに数か月かかることも。
ずーっとストーブの前に張り付いて同じ部分を温めるのは避けましょう。
こたつや電気毛布も注意が必要です。
普通のやけどよりも深くて重症な低温やけど
また、付けっぱなしのストーブの傍で寝てしまい、低温やけどになる方も。
低温やけどは膝から下に多く、傷は小さいながらも深いことが多くて治るのに時間がかかります。
寒いこの時期、冷え対策に湯たんぽを使っている方も多いと思います。
かわいいカバーも売っていますね。
ただ、湯たんぽは低温やけどを起こしやすいアイテムです。
その他、電気毛布・カイロなども要注意です。
低温やけどを起こす温度とは
やけどというと、フライパンやお湯など、熱い温度のものを想像しがちですが、低温やけどは体温よりも少し高い温度(45~50℃くらい)で容易に発症します。
ポイントは、長時間の接触です。
熱湯や湯気を浴びたら、慌てて水で冷やしますよね。
よっぽど大量に広範囲に浴びたら別ですが、たいていは赤みと水ぶくれで終わることが多いです。
(その代わり、痛いんですよね)
一方、低温やけどの場合、「アチチ(熱い)!」とならないので、大きな痛みを感じないまま、長時間同じ場所に接触していることも多いです。
特にカイロなど貼るアイテムは、リスクが高いです。
例えは悪いですが、ステーキのように強火で一気に表面に焦げ目をつけるか、(この場合、中はレア)お肉を弱火でじっくり焼くか(表面に焦げ目をつけずに中まで火を通す)という違いなんですね。
見た目よりも重症になりやすい低温やけど
実は低温やけどの方が重症のことが多いです。
低温やけどの場合、「痛みなどの自覚症状は少ないが、傷が深い」という場合が多いです。
これは、熱が加わる過程で痛みを感じにくいだけではないんです。
傷が深すぎて、神経もダメージを受けてしまっているため、痛みを感じなくなっているのです。
この場合、部位によっては筋肉や骨までダメージが達していることも多く、治療にものすごく時間がかかります。
そして、気づいた当日は単なる皮膚の赤みだったのに、日を追うことに傷が悪くなってくる(見た目上)のが特徴です。
これは、病院での処置が悪いのではありません。
深い部分のダメージは、後から表面に出てくるのです。
このことを理解していないと、いたずらに病院への不信感が募ります。
(同じことは、褥瘡(じょくそう=床ずれ)でも起こります)
慌てず、病院で指示された処置をきちんと継続しましょうね。
治りづらい部位と持病
特に、くるぶしから足にかけて、湯たんぽでの低温やけどが多いですが、下肢は心臓から遠く血流が良くない部位なので、治るのに時間がかかります。
ひざ下~足は、ふくらはぎを除けば骨が皮膚のすぐ下にあるので、傷が深くなりがちです。
糖尿病の方は、特に注意です。
もともと神経がダメージを受けているので、熱さや痛みに鈍感になっています。
また、高血糖のせいで傷の治りが悪く、免疫力も落ちているので傷から感染しやすくなります。
「痛いやけど」は確かに辛いのですが、神経が残っている証拠、ダメージが浅かった証拠とも言えますね。
体に接触させたまま寝ないように気を付けましょう。
湯たんぽカバーを付けましょう、タオルで巻きましょう、など注意喚起はされてきていますが、寝る時は、体から離した方が安全です。
意識がなくなると、低温やけどのリスクが上がります。
日中、冷え対策に腰やお腹まわりに湯たんぽを使う方もいると思いますが、寝る時はぜひ気を付けてくださいね。
注意したい対処法、処置の仕方
やけどを冷やす時に湿布や冷却シートを使う方がいますが、炎症を起こした皮膚に直接貼るとかぶれのリスクが大きくなります。
少し冷たい水で冷やすとよいですが、長時間冷やし過ぎないようにしましょう。
(文献によって差がありますが、5-30分以内と書かれています。)
そして、ばい菌がつくからといって消毒する方がいますが、かえって傷の治りが遅くなったりかぶれたりするので、自己処置をせずに病院で手当を受けましょう。
低温やけどは思ったよりも手強いです。治るのに数ヶ月かかることもしばしばです。
予防に勝るものはありませんので、北国の方はご注意下さい!
札幌市の皮膚科専門医・美容皮膚科医です。2022年7月に札幌市厚別区新札幌にて「さとこ皮膚科・美容クリニック」を開院しました。
私自身が体質的な敏感肌に悩み、普段のスキンケアを見直すことで肌のトラブルを減らせると痛感しています。
忙しい外来では伝えきれないたくさんのことを、記事を通してお届けしたいと思っています。
スキンケアのよくある間違いについて医学的な視点でお伝えしているほか、敷居が高いと思われがちな美容皮膚科治療についても皮膚科専門医として発信していきます。
2006年札幌医科大学卒業
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医/美容皮膚科・レーザー指導専門医
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