たるみの原因、40代から始まる顔の骨の痩せ~原因と対策
顔のたるみの原因には様々なものがあります。
皮膚の弾力低下、筋肉や脂肪の変化…
その中でも多くの方に衝撃なのは、顔の骨の痩せです。
この記事では、骨と女性ホルモンの関わりやエクオールの可能性について書いていきます。
こちらの2枚の写真を見比べてみて下さい。
どこが変化したかお分かりでしょうか?
まず、目の穴が広がります。
顎の骨も痩せてきていますね。
(Robert B Shaw Jr, Evan B Katzel, Peter F Koltz, Michael J Yaremchuk, John A Girotto, David M Kahn, Howard N Langstein. Plast Reconstr Surg. 2011 Jan;127(1): 374-83. より引用)
顔を作る土台である骨が大きく変化するのですから、その上に存在する筋肉や脂肪や皮膚が位置移動してくるのは容易に想像できると思います。
こうした「奥からの変化」がたるみに関係していることが分かってきました。
では、この「骨の痩せ」はいつ頃から起こってくるのでしょうか?
米国における研究で、年代別に腰椎と顔面骨(上顎と下顎)の骨密度を比較したものです。
(Robert B Shaw Jr, Evan B Katzel, Peter F Koltz, David M Kahn, Edward J Puzas, Howard N Langstein. Aesthetic Surg J. 2012 Nov;32(8): 937-942. より作成 監修:アオハルクリニック院長 小栁衣吏子先生)
腰椎よりも顔面骨の方が、加齢による骨密度の減少割合が約10%も大きいというデータが出ています。
腰椎の骨量減少は61歳以上の高齢層で認められる一方、顔面骨の骨密度は41~60歳の中年層ですでに減少し始めています。
もう1つのデータもご紹介します。
(Robert B Shaw Jr, Evan B Katzel, Peter F Koltz, Michael J Yaremchuk, John A Girotto, David M Kahn, Howard N Langstein. Plast Reconstr Surg. 2011 Jan;127(1): 374-83. より引用)
目の穴が広がっていく度合いを、年齢別に見たものです。
Youngは20~40歳、Middleは41~64歳、Oldは65歳以上です。
男性(Male)の場合、年齢に伴って少しずつ目の穴が広がっていくのに対し、女性(Female)はMiddleの年齢での変化が大きくなっています。
更年期は閉経前後5年間を指しますが、一般的に45~55歳あたりですので、ちょうどMiddleの年齢に入ってきますよね。
同様に、男性と女性における顔の変化について興味深い報告があります。
(Sonja Windhager, Philipp Mitteroecker, Ivana Rupic, Tomislav Lauc, Ozren Polasek, Katrin Schaefer. Am J Pys Anthropol. 2019 Aug; 169(4): 678-688. より引用)
顔全体を細かくプロットして形態の変化を調べたものですが、女性は男性に比べて50-60歳の間に最大3倍のスピードで変化するというデータが出ています。
特に下顎骨の減少が大きいということがわかっており、これがいわゆる「フェイスラインのもたつき」に繋がっていきます。
こうした骨の代謝に大きく関わるのが女性ホルモン(エストロゲン)であり、更年期に急激に減少していくことが性差の原因の1つだと結論づけられています。
(男性の体でもエストロゲンは作られていますが、女性のように急激に変化するわけではないため、年齢に伴って顔が変化していきます。)
閉経後の女性では、全身の骨密度も低下していきます。
骨粗しょう症のリスクが高くなり、骨折から寝たきりに繋がることは社会的な問題にもなっていますよね。
では、こうした変化に対して手立てはないのでしょうか。
大豆由来の成分であるエクオールを摂取することで、骨密度の低下を食い止めることが期待できるデータがあります。
(Kenneth D R Setchell, Nadine M Brown, Eva Lydeking-Olsen. J Nutr. 2002 Dec; 132(12):3577-84. より引用)
閉経後の女性に、2年間毎日豆乳500mL(イソフラボン量で約100mg)を飲んでもらった結果を示しています。
BMDは骨密度、BMCは骨塩量を示しています。
イソフラボンを摂らないグループ(棒グラフ左)は骨密度・骨塩量が約4%低下しましたが、イソフラボンを摂ったグループではむしろ増加しています。
更にいうと、イソフラボンを摂ったグループのうちエクオールを自分で産生できる人(棒グラフ右)と産生できない人(棒グラフ中央)でも差が見られました。
エクオールは、腸内細菌によって大豆製品中のイソフラボンから変換されますが、この腸内細菌を持っている人は日本人女性で約半分、欧米では約30%と言われています。
(最近では若い日本人女性のエクオール産生率は減っており、食の欧米化も原因の1つとして言われています。)
豆腐2/3丁または納豆1パックを毎日食べると良いですが、腸内細菌を持っていない人は、大豆製品を摂るよりも直接エクオールを摂った方が効率がいいです。
あなたがエクオールを作れる体かどうかは、専用のキットを用いて自宅で尿検査で調べることができます。
エクオールサプリメントはいろいろありますが、1日10mgを摂取できるものを選び、最低3か月は続けましょう。
もともとの骨格や脂肪の量もありますので、エクオールだけで顔のたるみを克服できるわけではありませんが、更年期の年代を境に女性の顔立ちが大きく変化するということは知っておいていただきたいですね。
エクオールは小じわや乾燥肌の改善、薄毛や白髪の進行予防にも関係しており、その他の更年期症状を和らげることも期待される成分です。
骨そのものへのアプローチは体の内面が関わっていますので、内側からの美容として女性ホルモンやエクオールを意識することが大切です。
美容皮膚科のたるみ治療でヒアルロン酸注入を用いるのは、痩せた骨の影響を補うためなんですよね。
更年期の治療としては、エストロゲンを投与するホルモン補充療法があります。詳しくは産婦人科の先生にお尋ね下さい。
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札幌市の皮膚科専門医・美容皮膚科医です。2022年7月に札幌市厚別区新札幌にて「さとこ皮膚科・美容クリニック」を開院しました。
私自身が体質的な敏感肌に悩み、普段のスキンケアを見直すことで肌のトラブルを減らせると痛感しています。
忙しい外来では伝えきれないたくさんのことを、記事を通してお届けしたいと思っています。
スキンケアのよくある間違いについて医学的な視点でお伝えしているほか、敷居が高いと思われがちな美容皮膚科治療についても皮膚科専門医として発信していきます。
2006年札幌医科大学卒業
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医/美容皮膚科・レーザー指導専門医
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