シミ取りレーザーで失敗した、かえって色が濃くなったと言われる理由
シミ取りレーザーを当てたら失敗した、かえって色が濃くなったと聞いて、不安に思っている方はいらっしゃいませんか?
綺麗になるための治療なのに、今よりも悪くなってしまうのが怖い…外来でもよくご質問を受けます。
シミ取りレーザーで失敗した、かえって色が濃くなったと言われるのには理由があるんですね。
主な理由を挙げる前に、シミ取りレーザー治療の経過について書いておきます。
シミ取りレーザーの治療をすると、こんな感じのテープを貼る、またはワセリンで保護します(施設によってアフターケアの方法は異なります)。
治療後1-2週間してテープを取ると、シミの部分が薄皮のように一緒にはがれてきて取れます。
そして治療後1ヶ月くらいすると、レーザーを当てたところに一時的に色戻り(炎症後色素沈着)が出てきます。
これはヤケドや虫刺されの跡が茶色くなるのと同じメカニズムで、3-6ヶ月ほどかけて元の肌色に戻っていきます。
これを踏まえたうえで、理由を見ていきましょう。
①そもそも、レーザーが適応になるシミではない
シミには複数の種類があり、主なものはこの4種類です。
老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)
そばかす(雀卵斑:じゃくらんはん)
肝斑(かんぱん)
炎症後色素沈着(ヤケドや虫刺されの跡)
これら全てがレーザーに向いているわけではないんですね。
4つのうち、クリっとしたシミ(老人性色素斑、そばかす)がレーザーの適応になります。
肝斑はモヤッとした形を取ることが多く、シミ取りレーザーで通常使うパワーで当ててしまうと後からかえって濃くなってしまいます(数か月で次第に薄くなってきますが、時間がかかります)。
これは患者様側の要素ではなく、治療者側の要素になりますね。
レーザーを当ててよいタイプのシミなのか、そもそも癌ではないのか、ということを皮膚科専門医としてきちんと診断してから治療にあたっています。
肝斑をコントロールするためのレーザーの当て方もありますが、一般的なシミ取りレーザー治療とは別物と考えておきましょう。
上記4つのシミについて、詳しくはこちらの2つの記事で解説しています↓
②肝斑エリアの中に老人性色素斑がある(重なっている)
複数の種類のシミが混じって、顔に存在していることも多いです。
モヤっと広がるシミ(肝斑)の中に、クリっとしたシミ(老人性色素斑やそばかす)が入っていることも。
(こちらの写真は、私の患者様ではなくイメージ画像です。)
この場合、いきなりレーザー治療をすると、ベースにある肝斑の影響で治療後の色戻りが濃く出てしまいます。
先に飲み薬や塗り薬やイオン導入などで肝斑の治療を始めてからレーザー治療をする、あるいはレーザー以外のマイルドな治療法をお勧めする、などで対応しています。
③炎症後色素沈着が長引く
もともと薄いシミに強くレーザーを打った場合、もとのシミよりも濃く色素沈着が出る場合があります。
薄いシミの場合、反応するメラニンが少ないためレーザーを強く当てる必要があり、それに比例して照射後に色素沈着が強く出る場合があります。
よって、もともとのシミよりも濃い色素沈着が現れることで「かえってシミが濃くなった」と感じることになります。
日焼けした後に赤くなる人、赤くならずに黒くなる人など様々なのと同じで、色素沈着の出方も個人差があるんですよね。
色素沈着は3-6ヶ月ほどで自然に落ち着きますが、隠そうとしてゴシゴシ擦ったり、コンシーラーを叩き込んだりすると長引いてしまいます。
治療した場所が強い紫外線に当たってしまうのもよくありません。
治療後のケアに気を付けることで最短で落ち着かせることができます。
シミ取りクリーム(ハイドロキノン)を使って手助けすることもあります。
失敗ではないけれど…1回で取れなかった時に考えられること
シミ取りレーザーは切れ味の鋭いレーザーではありますが、1回で100%取れることをお約束できるわけではありません。
シミの厚さなどによっては追加治療が必要になることもあります。
また、薄すぎるシミはレーザーで取りきれない場合もあります。
服についた食べ物のシミを思い浮かべると、薄い方が取れやすい気がしませんか?
皮膚のシミの場合、色素(メラニン)に反応するレーザーを当てるのですが、薄いシミは色素が少ないので光が反応しづらいのです。
レーザーのパワーを強くして当てるのですが、やみくもに上げると肌が強くヤケドして傷跡を残してしまうため、パワーが強ければ強いほどいいわけでもありません。
レーザーの種類もいろいろあるので一概には言えませんが、シミの濃さとレーザーの光の種類によっては限界が出てくることもあるということですね。
そばかすは遺伝的な要素があるため、一度取っても新たに出てくる場合もありますし、薄く残ったところから再発してくることもあります。
そのため、紫外線やスキンケアに気を付けながら定期的にお手入れしていく方法が向いています。
(先程のリンク、「シミ取り治療はレーザーだけではありません…選ぶポイントとは」をご覧下さいね。)
もう1つ、シミが1回で取れなかった理由として考えられるのは、「シミに見えるアザ」だという可能性。
深いところにメラニンが存在する「後天性真皮メラノサイトーシス」の場合、1回の治療では取れないため、3-6か月ごとに複数回治療が必要になってきます。
典型的なものはわかりやすいのですが、時に他のタイプのシミと見分けが付きづらいこともあり、経過をよく診ていく必要があります。
実はシミができるメカニズムにはいろいろあり、紫外線で傷ついた細胞から「シミを作りなさい」というシグナルが出続けることが関係しているとわかってきています。
そのため、「一度治療したら同じ場所からは一生できない」とは言い切れず、数年後にまた出てきてしまう可能性は残ってしまいます。
治療後も、スキンケアに気を付けながら再発を予防する必要があるのは、そのためなんですね。
このように、シミ取りレーザーが効かない、当てたらかえって悪くなった、再発した、というのには理由があります。
そのため、1つ1つのシミを診断した上で、防げるものは防ぎ、予測される経過はあらかじめご説明し、継続的なスキンケアの必要性などをお伝えしながら治療にあたっています。
シミ治療に不安のあった方、ご参考になさって下さいね。
そして、これからのシミを防ぐために…普段の紫外線対策については、こちらの記事をチェックしてみて下さい!
札幌市の皮膚科専門医・美容皮膚科医です。2022年7月に札幌市厚別区新札幌にて「さとこ皮膚科・美容クリニック」を開院しました。
私自身が体質的な敏感肌に悩み、普段のスキンケアを見直すことで肌のトラブルを減らせると痛感しています。
忙しい外来では伝えきれないたくさんのことを、記事を通してお届けしたいと思っています。
スキンケアのよくある間違いについて医学的な視点でお伝えしているほか、敷居が高いと思われがちな美容皮膚科治療についても皮膚科専門医として発信していきます。
2006年札幌医科大学卒業
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医/美容皮膚科・レーザー指導専門医
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