美肌菌と化粧品とスキンケアの関係

皮膚には、腸と同じように、善玉菌と悪玉菌がいます。
抗生物質の飲み薬を飲むと、腸内細菌のバランスが崩れて下痢を起こしたりしますが、皮膚もスキンケアの仕方によっては常在菌(いつも皮膚にいる菌)のバランスが崩れてしまい、さまざまな皮膚病を引き起こすことがあるのです。
肌を守る、表皮ブドウ球菌
「美肌菌」とも呼ばれる表皮ブドウ球菌は、角質層の隙間などに生息しています。
汗や皮脂をエサにして、保湿成分を作り出したり、肌を弱酸性に保ったりする働きがあります。
また、アトピー性皮膚炎などに関係する黄色ブドウ球菌の増殖を抑えます。
この菌は、肌の表面の角質層に多く住んでいるので、洗顔をし過ぎると菌が少なくなってしまいます。
菌の数が元に戻るまでに半日程度かかるため、この菌の恩恵を受けるためには、石けんでの洗顔は1日1回にとどめた方がいいのです。
朝はぬるま湯洗顔だけで十分という考え方は、こうした理由も関係しています。
ただし、10代のニキビ肌の方は1日2回の石けん洗顔が望ましいことも多いので、乾燥肌やアトピー性皮膚炎の方向け、と捉えていただければと思います。
アクネ菌には、良い面もある
アクネ菌は、酸素を嫌うため、毛穴の中に生息しています。
皮脂をエサにして、脂肪酸などを作り、肌の弱酸性維持に貢献しています。
↑皮脂腺は、毛穴の中に出口があります。
アクネ菌といえばニキビの原因として有名ですが、アクネ菌の存在そのものが悪いわけではないんですね。
様々な原因で毛穴が詰まったり皮脂の分泌が増えたりして、毛穴の奥でアクネ菌が増殖しすぎると、毛穴の炎症を引き起こす物質が分泌されてニキビができてきます。
最近のニキビの塗り薬は、この点に注目して毛穴の詰まりを取るような作用を持つものが多数発売されています。
ひどく炎症を起こしたニキビには抗生物質の塗り薬も使われますが、軽度のニキビには、抗生物質の薬を使わない方向になってきています。
間違ったスキンケアは、皮膚の菌のバランスを崩す
洗顔のし過ぎや角質ケアのし過ぎは、美肌菌である表皮ブドウ球菌を減らしてしまいます。
角質にある保湿成分が少なくなると、皮脂の分泌によって乾燥を防ごうとするので、皮脂を好むアクネ菌が増えやすくなったりもします。
また、角質ケアのし過ぎでターンオーバーが乱れると、毛穴が詰まりやすくなることも知られています。
乾燥肌なのにニキビができる、という方はこのパターンが多いです。
また、アルコール(エタノール)が入った化粧水などを使い続けると、常在菌のバランスが崩れてしまいます。
アルコールには、殺菌作用があります。
アルコール綿=脱脂綿は、注射の際に消毒に使いますよね。
そして、名前の通り皮膚表面の皮脂を取ってしまいます。
さっぱりタイプの化粧水には、スースー感を出すためにアルコールが入っていることがありますので、チェックしてみてくださいね。
普段のスキンケアは、常在菌のバランスとも密接に関係しています。
善玉菌である表皮ブドウ球菌が減ってしまうと、肌の弱酸性を維持できなくなり、病原性の強い黄色ブドウ球菌や真菌(カビ)などが増えてしまいます。
スキンケアを見直さずにステロイドに頼るのも、要注意
ちなみに、99%の人は、顔に「ニキビダニ」(デモデックス)がいます。
ステロイドの塗り薬を使いすぎるなどで肌の免疫力が下がると、こうした微生物が増え、酒さ様皮膚炎という皮膚病を引き起こします。
この病気は、皮膚科医でも治療に手こずることが多く、改善に長期間を要します。
間違ったスキンケアで、何か肌がかゆい、赤くなる…を繰り返し、ステロイドの塗り薬に頼ることも、良くありません。
皮膚病を予防するという観点からも、スキンケアはとても大切です。
善玉菌を上手に生かすということもおさえておきたいですね。
ネットではヨーグルトパックなども紹介されていますが、食べ物を顔に塗るということはアレルギーのリスクを伴います。
バリアの壊れた皮膚から食べ物が侵入し、食物アレルギーのスイッチを入れてしまうということがわかってきています。
むやみに食べ物を肌に塗らないようにしましょう。

札幌市の皮膚科専門医・美容皮膚科医です。2022年7月に札幌市厚別区新札幌にて「さとこ皮膚科・美容クリニック」を開院しました。
私自身が体質的な敏感肌に悩み、普段のスキンケアを見直すことで肌のトラブルを減らせると痛感しています。
忙しい外来では伝えきれないたくさんのことを、記事を通してお届けしたいと思っています。
スキンケアのよくある間違いについて医学的な視点でお伝えしているほか、敷居が高いと思われがちな美容皮膚科治療についても皮膚科専門医として発信していきます。
2006年札幌医科大学卒業
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医/美容皮膚科・レーザー指導専門医
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