あなたの肌断食がうまく行かない理由

スキンケア

化粧品を極力使わない美容法として肌断食が有名ですよね。

一見シンプルに見えるこの方法、実は奥が深いんです。

定義は人によって様々ですが、「何もつけないスキンケア」「水のみ洗顔」「スキンケア(基礎化粧品)やメイクを一切やめる」などが代表的で、「肌本来の保湿機能を活かす・呼び戻す」というフレーズもよく見かけます。

洗顔後につけるものとしてワセリンのみを推奨する方法もあります。

肌につけるアイテムを極力減らすというのが共通したコンセプトですが、肌断食に失敗したという声が多いのも事実です。

肌断食の体験談ブログやまとめサイトを見ると「極端な方法なので自分に合うかよく見極めて、トラブルが出たら皮膚科医に相談しましょう」と書いていますが…

ほとんどの方は相談できずにネットの情報に右往左往した挙句、断念しているのが現状なのではないでしょうか。

実は私自身、水のみ洗顔でワセリンのみ顔に付けるという「代表的な肌断食」を試してみたことがありますが、続けられませんでした。

なぜうまく行かなかったのか、個人的な経験を交えて皮膚科医の視点で考察していきます。

 

①ワセリンだけでは難しい…ニキビの原因にも

まず初めに、「洗顔後に何も付けない」という方法は確実に失敗します。

肌断食に挑戦しようと思う方は、それまで多くの化粧品を使ってきてうまく行かなかったから肌断食を始めようとしている場合が多く、長年の間違ったスキンケアで肌が傷んでいます。

そこに何も付けないと、乾燥のヒリヒリ感に耐えられなくなります。

そして日を追うごとに乾燥が悪化して小じわが目立ち、乾燥を補うために皮脂が増加して毛穴の詰まりやニキビも増えてきます。

そこでワセリンを付けようということになるのですが、これが難しいのです。

なぜならワセリンは「保湿」ではなく「保護」だからです。

これは塗り薬を専門とする皮膚科医でなければこだわらないところですが、ここに大きな落とし穴があるんですね。

ワセリンは、肌表面からの水分の蒸発は防ぎますが、それ自体に肌の水分を増やす作用はありません。

一方、保湿剤(処方箋薬だとヒルドイド®など)は肌に水分を集めて保湿するという役割があります。

ワセリンを使う場合は自力で肌を回復させなければならないんですが、後でお伝えするように、スキンケアが間違っているといつまで経っても肌が回復しないんです。

それでワセリンを多く付けてしまうことで熱がこもって痒くなったり、毛穴が塞がってニキビができやすくなったりします。

ワセリンはシンプルな組成で刺激が少ないのですが、使いこなすのは案外難しいんです。

 

 

 

 

そしてワセリンとメイクは相性が悪いです。

水洗顔のみでワセリンを使った肌断食を推奨する女性は、ノーファンデ・ほぼノーメイクの方が多いです。

ただ、ほとんどの女性はメイク自体をやめることは考えていないため、ずれが生じてきてしまうんですね。

ワセリンを塗った上にパウダリーファンデーションを乗せると、どうしてもよれてしまいます。

リキッドファンデーションならよれにくいですが、その場合強いクレンジングを必要とするために肌の回復が遅くなります。

メイクとの両立ができなくて肌断食を止めてしまう方も多く見受けられます。

 

②栄養素の不足

健康な肌に必要な栄養素と聞いて、何を思い浮かべますか?

多くの女性はビタミンCと答えますが、それだけでは足りないんですね。

肌や粘膜を整えるためのビタミンB群、肌の原料であるたんぱく質も必要です。

肌の細胞を作っているケラチンも肌の保湿成分もたんぱく質でできているため、不足すると皮膚がきちんと回復してこないんです。

しかも皮膚や髪の毛というのは命に直結しないため、順番としては最後に回ってきます。

今までの診療で肌断食をしている方にお会いしてきましたが、ベジタリアン・ビーガンといった食生活の方が多く、オーガニック志向・動物性のものを嫌う傾向があるのかもしれません。

(ベジタリアンが肉や魚を食べないのに対し、ビーガンは更に卵・乳製品も口にしません。ビーガンが完全菜食主義者と呼ばれるのはこのためです。)

信仰に近いものもあるので強制的には変えられませんが、動物性の食材からしか摂れない栄養素もあるため大きな偏りがあったんでしょうね。

ベジタリアンやビーガンを貫くなら、サプリメントは必須です。

ちなみに、たんぱく質とビタミンB群が豊富な食材としては赤身の肉が代表的です。

肌に良い食事というと、ダイエットも兼ねてサラダばかり食べる女性も多いですが、それでは肌も髪の毛もボロボロになってしまいます。

肌を回復させる栄養素を摂っていないのにワセリンだけしか塗らないのでは、軌道に乗せるまでに時間がかかり挫折のもとです。

 

 

 

 

 

③スキンケアが間違っている

仮にノーメイクで肌断食を頑張って、水だけ洗顔・ワセリンのみになったとしても、ゴシゴシ擦って角質ケアをし過ぎると乾燥肌は改善しませんし、くすみの原因にもなります。

メイクをしながら肌断食をする場合も、強いメイク落としで肌の保湿成分を大量に奪っていては、肌本来の保湿機能を活かすという肌断食のコンセプトと矛盾していますよね。

肌断食について書かれている多くの記事では、この視点が抜けています。

「化粧品を減らす!」というイメージばかりが先行し、食事やスキンケアの大切さが語られていません。

これが全部セットになっていないと肌断食は難しいです。

 

 

 

 

それから、日焼け止めも使わないという肌断食がありますが、皮膚科医の立場からは勧めておりません。

紫外線による影響は、シミ・シワ・たるみの原因になりますし、皮膚癌のリスクを高めてしまいます。

確かに日焼け止めは肌荒れを起こしやすいのですが、かぶれにくい「紫外線吸収剤フリー」「ケミカルフリー」でお湯や石けんのみで落ちるものも増えてきていますので、肌の負担を少なくしながら紫外線対策をしていただきたいです。

 

まずは日焼け止め、ファンデーション、メイク落としから見直しを

私の個人的な見解ですが、メイクをしながら化粧品を減らしていくには、日焼け止めやファンデーション、メイク落としを見直すことから始めるとうまく行きます。

〼石けんで落ちるファンデーション・日焼け止めを使い、オイルクレンジングのような強いメイク落としを使わない

〼肉・魚・卵・豆腐などのたんぱく質を積極的に摂る

〼こすらない、叩かないなど肌を傷めないスキンケアを徹底する

肌が回復するには最低でも2週間かかります。2-3日で「やっぱり無理!」とならないよう、できることから少しずつ始めていきましょう。

 

■肌をキレイにするには、結局何をしたら良いのでしょう?↓

キレイになるために今すぐ始めること、やめること

 

■化粧品は「何を」使うかと同じくらい、「どう」使うかも大切です!↓

基礎化粧品を買い足す前のチェックリスト

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